バス
カメルーン国内の移動にはバスを利用します。
鉄道もありますが、1日1往復、発着時間が決まってない、時間がかかるなど不便なことが多いため、交通手段としてはあまり利用されていません。
このバス移動はちょっとした冒険。日本でのように寝ている間に目的地なんて具合にはいかず、移動中は何が起こるか分かりません。体力、度胸、根気に加えて、運も必要。
バス選び
カメルーンには、日本の高速バスくらいの大型バス、スクールバスくらいの中型バス、バンくらいの小型バスがあります。
大型バスはシート1席分の座席を確保して乗れます。バス乗り場で絶好の空いている座席を見つけて、浮かれてチケットを買いに行く。これは全然ダメ。なぜならカメルーンのバスは出発時刻が定まっておらず、満席になったら出発という仕組み。
乗客のまばらな大型バスに乗った場合、出発までの長〜い時間を待たなければなりません。
小型バスは?今にも出発しそうなバスを見つけて、近づいていきます。サービス係も「お前が乗ったらすぐ出るぜ」的なことを言い、ラッキーと思ってチケットを買う。しまった、と後悔。自分の骨盤よりも狭いスペースに押し込められました。
運転席の横には2人、後部は4〜5人が1列に詰め込まれます。
一番お気に入りの席は運転席の横。席にゆとりがあって、見晴らしもいい。後部の窓側じゃない席はハズレ。空気が薄く、身動きがとれません。
バスを選ぶ余裕があればいいですが、目的地によってはバス会社が限られていたり、選り好みすればそれだけ出発が遅れたりするので、贅沢を言わず、運を天に任せ、目の前のバスに乗るときも多々あり。
ただし、僕の任地は首都ヤウンデと大都市ドゥアラ間に位置していることもあって、VIPバスのある会社もあります。VIPバスとは、時刻表通りに運行し、車内にエアコン、トイレ、フリーWiーFiを完備、おまけにパンと飲み物のサービス付き。
運賃が普通のバスの2倍くらいかかるのと、朝に行かないと日中の便に乗れなかったりするので、最初の頃は利用していましたが、最近は普通のバスで冒険を楽しんでいます。
出発までの待ち時間は、車内の暑さに耐え、物売りが売りに来る物をぼんやり眺めます。
飲食物やポケットティッシュくらいは買う人がいるだろうなと思うけど、携帯電話、SIMカードやソーラーランプなどの電子機器、法律や科学の教科書みたいな本、サングラス、食器類や包丁など、見事に購買意欲をそそらない物も売りに来ます。
ついに車内がすし詰め状態になって準備完了。いよいよ出発!
道のり
ガタガタガタガタ、ガッタンガッタン。まず道がきちんと舗装されていません。
舗装されていない場所を避けたり、頻出するDéviation(迂回路)を通ったり、減速のために設置されたコンクリートの隆起(スピードハンプ)を越えたり。
体をいろんなところにぶつけ、車酔い。
道中には様々なイベントが待ち受けています。
まずはPéage(料金所)。通行料の支払いのために運転手がスピードを落としている間、バスの周囲に集まった物売りとの買い物タイム。飲み物から果物、バナナチップスやピーナッツなどを売っています。窓からお金と物を交換しますが、バスは停車しないので素早いやり取りが必要。
次にContrôle(検問所)。乗客全員が身分証を提示します。外国人である僕たちにとってこれがなかなか厄介です。いろいろと絡まれたあげく、最終的にはお金だったり、物だったりを要求される場合も。
僕自身は今までに面倒なことに巻き込まれたことはなく、海辺のリゾートから来たときに「お土産にココナッツ買ってきたか」と言われたくらい。ココナッツ欲しかったんだ。笑
賄賂を要求するというような大げさなことではなく、とりあえず何かくれって言ってみるカメルーンスタイル。
それでも、少しでも自分に不備があればどういう事態になるか分からない怖さはあるので、身分証の所持だったりの必須事項は細心の注意を払って守っています。
そして、トイレ休憩。乗車時間が長い場合にトイレ休憩がありますが、バスが停車する場所は見晴らしのいい原っぱ。みんな人目につかないところへ散らばって用を足します。
腹痛を起こさないかどうかがバス移動での一番の心配事。
さらに、乗客の乗り降りがあります。途中の町や村に行く人々を降ろし、新たな乗客を乗せる。商魂たくましい運転手はバスが再び満席になるまで出発しません。また、必ず誰か1人は運賃が高いと揉め始めます。
ほかにも、他のバスとの乗客の取り合いやバス乗り場にいる仲介業者とのやり取りなど全く退屈しません。
運が良ければ、バスの故障も体験できます。道々では路肩に止まって修理されている車がいくつも。これを他人事だと思っていると、自分の乗っているバスもタイヤがパンク。運転手自身が馴れた手つきでスペアタイヤに交換しました。
重度の故障であれば、乗客は新たなバスをヒッチハイク。
熱帯雨林が延々と続く景色を眺め、うたた寝し、ガッタンで体をぶつけて起き、押し込められて隣の人と密着した体のしびれに耐え、いよいよ目的地に到着!
何だかよくわからないけど、ちょっとした試練を乗り越えたような達成感。
アクシデント(予期せぬ出来事)
カメルーンで暮らしていると計画通りにいかないことが沢山あります。
何事も時間通りに進まず、何が起きるか分からず、アクシデント(予期せぬ出来事)が起って、いろいろと巻き込まれていく。
アクシデントにはラッキーなことも、アンラッキーなこともあります。
幸運なことで言えば、バスで隣に座っていた学生がAKB48の曲を聴いていて仲良くなったり、靴下を買いたいと思っていたときに靴下を持った物売りが現れたり。
計画した通りに物事を進められる社会は便利ですが、カメルーンのように何が起きるかわからない社会も面白い。
バス移動はエネルギーが要るし、いつも首尾よくいくとは限りませんが、それでも何かを期待させる魔力があり、何が起きてもネタになるので、安全管理には気をつけながら、この冒険を楽しんでいきたいです。