Ici et ailleurs カメルーン滞在記🇨🇲

2018年6月から2年間、青年海外協力隊のコミュニティ開発隊員として、母子保健分野でのボランティア活動に従事します。

ピジン、クレオール、カムフラングレ

カメルーンでは、公用語のフランス語と英語、その他にそれぞれの民族語が通用しています。

 

さらに、これらの言語に加えて、PidginEnglish(ピジンイングリッシュ)ということばも人々の間で広く使われています。

 

今回はこのカメルーンピジンについて紹介します。

 

ピジン語、クレオール語

ピジン語とは、現地語を話す現地人と、現地語を話せず外国語を話す貿易商人などとの間での、異言語間の意思疎通のために互換性のある代替単語で自然に作られた接触言語です。

つまり、共通言語をもたない複数の集団でコミュニケーションを図るために生み出された言語です。

 

このピジン語の特徴として、単純な単語の組み合わせでしっかりした文法構造を持たないこと、語彙が少なく一つの単語が多義的に用いられること、ベースとなる言語の語彙以外に他の言語の語彙が混入していることなどが挙げられます。

 

このピジン語は様々な地域でそれぞれに発生していて、英語をベースに現地の言語と混成したピジン英語、フランス語をベースにしたピジンフランス語などがあります。カメルーンは英語をベースとしたピジン語です。

ちなみに、日本でも19世紀後半に横浜ピジン日本語というものが用いられていました。

 

さらに、このピジン語が次世代以降に発展して、母語として話されるようになった言語をクレオール語と言います。

 

ピジン言語が文法の発達が不十分で発音や語彙も個人差があるため複雑な意思疎通ができないのに対し、このクレオール語はそれらの要素が統一され、しっかりとした文法構造を持つ完成された言語になります。

 

カメルーンでは、カメルーンピジンピジンイングリッシュと呼ばれていますが、これはクレオール語の分類に入ります。

 

話は逸れますが、このクレオール語のとてもユニークな点は、親たちの世代ではなく、子どもたちによって生み出されるということです。

なぜクレオール語が子どもたちによって生み出されるのかは、言語学の分野での様々な研究のきっかけや手がかりとなり、ノーム・チョムスキーが唱えた普遍文法の発想に基づいて、人は生まれながらに普遍的な言語機能が備わっているのか、それとも言語は後天的に認知や他者への理解を通して獲得されるものなのか、人の言語習得の仕組みが解明されるかもしれません。

 

晩年の安部公房がこのクレオール語に強く関心を抱いて、もしこのテーマが小説として完成していたらどんな作品になったんだろうかと思います。

 

カメルーンピジン

カメルーンピジンは、15世紀から19世紀前半の奴隷貿易の時代に発生しました。

アフリカの国々はこれらの時代の歴史的記録を持ってない場合が多いですが、1845年にカメルーンにやってきた宣教師が、布教のためにピジン語を学ばなければならなかったとの記録があります。

 

その後、19世紀後半から第一次世界大戦までドイツの植民地時代になり、そこでピジン語の使用が禁止されましたが、実際にはプランテーションやインフラ建設での強制労働に動員された様々な民族の人々の間で、共通のことばとして広く使われていました。

 

そして、1961年にカメルーンはフランスとイギリスの植民地支配から独立します。公用語はフランス語と英語になりましたが、それ以後もピジン語は広く使われています。

 

現在は、英語圏の人々の約7割、フランス語圏の人々の約3割がピジン語を使えると言われています。

しかし、カメルーンピジンは地域ごとに発音や語彙が異なるため、異なる地域の出身者ではコミュニケーションが難しい場合もあります。

 

カメルーンピジンの例を挙げると、

 

-私たちは毎朝来ます。

-We come every morning.(英語)

-Wi de kam evri mornin.(ピジン語)

 

-3人の人たちが来ます。 

-Three people will be coming.(英語)

-Tiri pipo go di kam.(ピジン語)

 

このように語順に大きな違いはありませんが、ベースとなる言語の発音に基づく異なる単語が使われています。

発音に基づくので、ある程度聞き取れたり、理解できたりすると思うかもしれませんが、同僚に二人ピジン語を話せる人がいて彼らの会話を聞いてみましたが全くわかりません。笑

 

また、単に発音だけでなく、See you soonをSmall timeと言うなど独特の言い回しなどもあります。

 

このピジン語は、公の場での使用は歓迎されておらず、特に学校ではきちんとした英語が身に付かなくなるため使用が禁じられています。

 

市井の人々のことばとして、市場などで使われています。

 

Camfranglais(カムフラングレ)

今、カメルーン若い人たちの間では、カムフラングレという新しい言語が使われています。

 

これは、現地語、フランス語、英語、ピジン語などがさまざまに混ざり合ったことばです。

 

カムフラングレは、フランス語圏と英語圏が一つの国に統合されたことで、徐々に生まれてきました。

 

若い人たちを中心に友だち同士で学校で使われたり、市場などで使われていたり、また文化の面でも音楽に取り入れられたりしていて、カメルーンの人々が自らのアイデンティティを表現するための手段として、ダイナミックなことばとなっています。

 

 

この先、とても豊かな文化を持つカメルーンが、言語だけでなく、さまざまな分野でどのように発展していくのか非常に楽しみです。

 

最後に、カムフラングレを使った音楽で有名なカメルーン人のミュージシャンの動画を載せておきます。

それでは、みなさまSmall time !


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